更年期障害とは、閉経前後にみられる女性ホルモン(エストロゲン)の変動・低下に伴い、ほてり・発汗・気分の落ち込み・不眠などの症状が出現し、日常生活に支障をきたす状態をいいます。
更年期症状は多くの女性にみられますが、症状が強く生活に影響する場合には治療が可能です。
本記事では、更年期障害の病態・診断・治療方法について分かりやすく解説します。
更年期障害の病態(なぜ起こるのか)
更年期とは一般的に閉経前後約10年間(45〜55歳頃)を指します。
更年期症状と更年期障害の違い
- 更年期症状:更年期にみられるさまざまな身体・精神症状
- 更年期障害:症状により日常生活へ支障がある状態
発症の主な要因
更年期障害は以下が複雑に関与して起こります。
- エストロゲンの急激な変動・低下
- 加齢による身体変化
- 家庭・職場環境の変化
- 心理社会的ストレス
更年期障害の主な症状
症状は大きく3つに分類され、多くは重複して現れます。
① 血管運動神経症状(代表的症状)
- ほてり(ホットフラッシュ)
- のぼせ
- 発汗
- 動悸
② 精神神経症状
- イライラ
- 不安感
- 抑うつ
- 不眠
- 情緒不安定
③ その他の身体症状
- 肩こり・関節痛・腰痛
- 皮膚や粘膜の乾燥・かゆみ
- 頻尿・排尿障害
- 性交痛
更年期障害の診断
① 問診・症状評価
症状の種類・生活への影響・心理社会背景を丁寧に評価します。
② 他疾患の除外(重要)
以下の疾患との鑑別が必要です。
- 悪性疾患
- 甲状腺疾患
- うつ病など精神疾患
③ ホルモン検査(参考)
血液検査で以下を確認します。
- エストラジオール(E2)低下
- 卵胞刺激ホルモン(FSH)上昇
一般的な目安:
- FSH ≥40 mIU/mL
- E2 ≤20 pg/mL
※閉経前後では変動が大きく、診断は症状を重視します。
更年期障害の治療
治療ではまず生活背景を含めた十分な問診と生活指導を行い、その上で薬物療法を選択します。
症状に応じて治療を使い分けます。
| 主症状 | 主な治療 |
|---|---|
| ほてり・発汗 | ホルモン補充療法(HRT) |
| 不定愁訴 | 漢方薬 |
| 抑うつ・不安 | 向精神薬・カウンセリング |
複数治療の併用も可能です。
ホルモン補充療法(HRT)
減少したエストロゲンを補充し、更年期症状を根本的に改善します。
投与方法
子宮がない場合
→ エストロゲン単独投与
子宮がある場合
→ 黄体ホルモン併用(子宮体癌予防)
主なエストロゲン製剤
- 結合型エストロゲン(プレマリン)
- エストラジオール(ジュリナ)
- エストラーナテープ(貼付剤)
- ディビゲル(塗布剤)
- ル・エストロジェル
👉 血栓症リスクを考慮し、経皮製剤(貼付・ゲル)が近年よく使用されます。
主な副作用
- 不正性器出血
- 乳房痛
- 片頭痛
※投与量・方法調整で改善することが多いです。
黄体ホルモン製剤
- プロベラ
- デュファストン
- エフメノ(天然型プロゲステロン)
天然型黄体ホルモンは乳癌・子宮内膜癌リスクの観点から推奨される場合があります。
合剤
- メノエイドコンビパッチ(貼付剤)
HRTの禁忌
以下がある場合は使用できません。
- 乳癌・子宮内膜癌(現在または既往)
- 血栓塞栓症
治療期間
2〜4週ごとに効果と副作用を確認し、効果があれば数年間継続します。
漢方治療
HRTが使えない方や希望しない方に適しています。
| 症状 | 漢方薬 |
|---|---|
| イライラ・不眠 | 加味逍遙散 |
| 冷え・貧血傾向 | 当帰芍薬散 |
| のぼせ・赤ら顔 | 桂枝茯苓丸 |
| 関節痛・頻尿 | 八味地黄丸 |
体質に合わせて選択します。
向精神薬治療
更年期に伴う抑うつ症状にはSSRIを使用することがあります。
例:
- エスシタロプラム(レクサプロ)
心理療法やカウンセリング併用が有効です。
更年期症状で受診をおすすめする場合
- 日常生活に支障がある
- 不眠や気分の落ち込みが続く
- 動悸や発汗が強い
- 原因が分からず体調不良が続く
「年齢のせい」と我慢せず、治療可能な状態か評価することが大切です。
まとめ
更年期障害は、
- ホルモン変化
- 心理社会的要因
が重なって起こる疾患です。
現在は、
- ホルモン補充療法(HRT)
- 漢方治療
- 精神症状への治療
を組み合わせることで、多くの方が症状改善を期待できます。
つらい症状がある場合は、お気軽にご相談ください。