江戸川区一之江のクリニック

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更年期障害

更年期障害の治療としては,HRT(ホルモン補充療法),漢方薬,向精神薬などがよく使用されます.病態、診断、治療について解説します.

◆病態
・更年期に現れる多種多様な症状で,器質的疾患によらない症状を更年期症状とよび,さらに日常生活に支障をきたす病態を更年期障害と呼ぶ.
・閉経前後の退行性変化(エストロゲン変動と低下)と家庭・社会での環境変化(心理社会的変化)などが複雑に作用し発症する.

◆診断
・①血管運動神経症状(ほてり・のぼせ,発汗,動悸など),②精神神経症状(情緒不安定,イライラ,抑うつ,不安,不眠など),③その他(肩こり,関節痛,腰痛などの運動器症状,乾燥,かゆみなどの皮膚粘膜症状,排尿障害,頻尿,性交痛などの泌尿生殖器症状)からなり,重複することが多い.
・器質的疾患(特に,悪性疾患,甲状腺疾患)や精神疾患の除外が必要.
・血清エストラジオール(E2)や卵胞刺激ホルモン(FSH)測定→E2低下、FSH上昇がみられる(閉経後数年は変動が大きいので参考として利用する。閉経はFSH40mIU/ml以上かつE2 20pg/ml以下で判断)

◆治療
 最初に社会心理的背景を含めた十分な問診を行う.生活指導を行い,次に薬物治療を併用する.薬物療法の使い分けとしては,血管運動神経症状が主症状の場合はホルモン補充療法(HRT:hormone replacement therapy),不定愁訴が主症状の場合は漢方治療,精神神経症状が主症状の場合は向精神薬やカウンセリングを選択する.これらの併用治療も可能である.

★HRT
 子宮摘出後の場合には,卵胞ホルモン製剤単独投与とし,子宮がある場合には黄体ホルモン製剤の併用か,両者の合剤を投与する.(子宮内膜増殖→子宮体癌を防ぐため)
1.卵胞ホルモン製剤(下記のいずれかを用いる)
1)結合型エストロゲン(プレマリン)錠(0.625mg) 1回1錠 1日1回
2)エストラジオール(ジュリナ)錠(0.5mg) 1回1~2錠 1日1回
3)エストラジオール(エストラーナ)テープ(0.72mg/枚) 1回1枚 2日に1回 貼付
4)エストラジオール(ディビゲル)ゲル(1mg/包) 1回1包 1日1回 塗布
5)エストラジオール(ル・エストロジェル)ゲル 1回1~2プッシュ 1日1回 塗布
・脂質や凝固系への影響(経口ホルモン剤は血液を固まりやすくし、血栓症のリスクを上昇させる)を考え、ジュリナや経皮剤がよく使われる
・HRTの副作用は不正性器出血,乳房痛,片頭痛などがある.もし副作用がでた場合は投与方法や投与量を調整する

2.黄体ホルモン製剤
 連日投与の場合は毎日、周期投与の場合には4週間のうち後半の10~14日間併用する.
1)メドロキシプロゲステロン(プロベラ)錠(2.5mg) 1回1錠 1日1回(連日投与),1回1錠 1日2回(周期投与)
2)ジドロゲステロン(デュファストン)錠(5mg) 1回1錠 1日1回(連日投与),1回1錠 1日2回(周期投与)
3)プロゲステロン(エフメノ)カプセル(100mg) 1回1カプセル 1日1回 就寝前(連日投与),1回1カプセル 1日2回 就寝前(周期投与.14日間投与,14日間休薬)
・乳癌や子宮内膜癌発症リスク軽減の点から天然型黄体ホルモンであるデュファストンやエフメノが推奨される

3.エストロゲン・黄体ホルモン合剤
 エストラジオール・酢酸ノルエチステロン(メノエイド)コンビパッチ 1回1枚 1週2回 貼付

上記の治療については、現在の乳癌・子宮内膜癌,血栓塞栓症とその既往がある場合は禁忌

‍2~4週おきに来院し治療効果と副作用のチェックを行い、改善効果を認めるようであれば,数年間は治療継続する.

★漢方治療
 HRT禁忌症例,副作用を危惧してHRTを希望しない症例も適応となる.
1.イライラ・不眠などの精神神経症状
 加味逍遙散エキス顆粒(2.5g/包) 1回1包 1日3回
2.冷え・貧血傾向・浮腫
 当帰芍薬散エキス顆粒(2.5g/包) 1回1包 1日3回
3.のぼせて赤ら顔で下腹部の抵抗や圧痛がある場合
 桂枝茯苓丸エキス顆粒(2.5g/包) 1回1包 1日3回
4.運動器症状・泌尿生殖器症状
 八味地黄丸エキス顆粒(2.5g/包) 1回1包 1日3回

★向精神薬
 更年期のうつに対して、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を使う事がある
(処方例)
 エスシタロプラム(レクサプロ)錠(10mg) 1回1錠 1日1回 夕食後

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