・月経困難症は月経に随伴して起こる下腹部痛,腰痛などの強い疼痛を主体とする疾患である.
・器質的原因のない機能性月経困難症と,子宮内膜症や子宮筋腫などの器質的疾患に伴う器質性月経困難症とに分類される.
・機能性月経困難症の疼痛症状に対しては,薬物療法が優先される.
◆病態
・症状は下腹部痛,腰痛,腹部膨満感,嘔気,頭痛,疲労・脱力感,食欲不振,いらいら,抑うつなどであり,月経に随伴して起こる.
・器質性月経困難症は子宮内膜症,子宮筋腫,子宮腺筋症,子宮奇形などの器質的疾患に伴うものである.
・子宮内膜で産生されるプロスタグランジンなどによる子宮の過剰収縮や血管れん縮が原因とされている.
◆診断
1.問診
・初経年齢,初経後~最近までの月経状態,痛みの程度や部位,持続時間,鎮痛薬などの内服歴などを聴取する.2.診察・検査
・内診・直腸診と超音波検査(経腟超音波検査が望ましい)により器質的疾患の有無を検索する.子宮筋腫,子宮内膜症などの器質的疾患が疑われた場合には,骨盤MRI検査を行う.骨盤内感染症を除外するために腟分泌物培養,クラミジアPCR検査を行う.
◆治療方針
機能性月経困難症の第1選択はNSAIDsを中心とした対症療法であるが,十分な疼痛緩和が得られない場合にはホルモン療法を行う.
【NSAIDs】
1)ロキソプロフェン(ロキソニン)錠(60mg)など 1回1錠 疼痛時頓用
【低用量エストロゲン・プロゲステロン(LEP)製剤】
2)レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール(ジェミーナ)配合錠 1回1錠 1日1回 周期投与(21日間内服,7日間休薬)あるいは連続投与(77日間連続内服し,その後7日間休薬する)
3)ノルエチステロン・エチニルエストラジオール(ルナベル)配合錠LD/ULDまたはノルエチステロン・エチニルエストラジオール(フリウェル)配合錠LD/ULD 1回1錠 1日1回 周期投与(21日間内服し,7日間休薬する)
4)ドロスピレノン・エチニルエストラジオールベータデクス(ヤーズフレックス)配合錠 1回1錠 1日1回 連続投与(25日目以降に3日間連続で出血が認められた場合,または,連続投与が120日に達した場合は,4日間休薬する)
5)ドロスピレノン・エチニルエストラジオールベータデクス(ヤーズ)配合錠またはドロスピレノン・エチニルエストラジオールベータデクス(ドロエチ)配合錠 1回1錠 1日1回 周期投与(28日間内服する)
【黄体ホルモン製剤】
6)ジエノゲスト(ディナゲスト)錠(0.5mg) 1回1錠 1日2回 月経周期2~5日目から服用開始
・他に、子宮内に直接挿入するレボノルゲストレル(ミレーナ)があり,5年間で交換または除去する.
・LEP製剤は血栓症のリスクがあることから年齢,喫煙,肥満のリスク因子に対しては慎重に投与する.
・ジエノゲストは高度の子宮筋腫または重度の貧血のある患者には出血症状が増悪し,大量出血を起こすことがあるため,注意する.