江戸川区一之江のクリニック

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男性更年期障害(LOH症候群)

男性更年期障害とは、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下によって引き起こされる症状のことです。医学上はLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれています。発症するのは40代後半ごろからで、患者さんが最も多いのは50~60代です。一般に、テストステロンの量は10代前半から急激に増え始め、20歳ごろをピークに年齢とともになだらかなカーブを描いて減少していきます。ところが何らかの原因でテストステロンが急激に減少してしまうと、さまざまな不調を引き起こすのです。テストステロンを減少させる要因はいくつかあり、その代表的なものがストレスといわれています。男性の50~60代に患者数が多いのは、加齢によるテストステロンの減少に加えて、職場でも家庭でもストレスの多い世代だからといえるでしょう。症状は大きく身体症状と精神症状に分けられます。身体症状は、朝立ちの消失や勃起不全(ED)といった男性機能の低下がまず挙げられます。ほかにも、のぼせ・多汗、全身倦怠感、筋肉や関節の痛み、筋力低下、骨密度低下、頭痛・めまい・耳鳴り、頻尿など精神症状としては、不眠、無気力、イライラ、性欲減退、集中力や記憶力の低下などとともにうつ症状が出る場合もあります。男性更年期障害になると、メタボリックシンドローム、心筋梗塞、脳梗塞やがんなどの生活習慣病のリスクが高まることもわかってきました。もしも心当たりの症状があるようでしたら、男性更年期障害なのかどうか、自分の症状はどの程度なのかをAMSスコアでチェックしてみてください。AMSスコアは男性更年期障害の診断に世界的に広く用いられている質問票で、17項目の質問に5段階で回答し、それぞれの点数を合計して総点数で評価します。
AMSスコアはこちらでチェックできますので、やってみてください。
(17~26 点:なし、27~36 点:軽度、37~49 点:中程度、50 点以上:重度)
AMSスコアが50点以上、遊離型テストステロン値が8.5pg/dl以下であれば男性更年期障害と診断されます。
テストステロンの値は個⼈差が⼤きく、さらに日内変動もあります。遊離テストステロン値が8.5~11.8pg/dlを境界域とし、8.5pg/dl以下の場合にテストステロン補充療法の適応とされています。
治療は漢方薬(補中益気湯、八味地黄丸、柴胡加竜骨牡蛎湯)や、テストステロン製剤(直接テストステロンを補充)・HCG製剤(精巣に働きかけテストステロンを分泌させる)の注射によりテストステロン値を上げる治療を行います。現在ホルモン製剤の入手が難しくなってきているため、代替方法として、クロミフェン内服(保険適応なし、自費)を行う場合もあります。男性更年期障害には生活習慣の改善も重要です。運動(筋肉を動かすことで男性ホルモンが増加する)、十分な睡眠(テストステロンは寝ている間に作られる)、ストレスをためない、食生活の見直し(タンパク質や亜鉛の摂取)なども大切です。
血中テストステロンの測定には午前中の血液検査が必要ですので、11時頃までに来院をお願いいたします。

加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)についてのまとめ

LOH症候群の症状は精神的,身体的ともに多岐にわたり,疾患特異的な症状はないが,以下の症状が特徴的である。
・40歳以上
・性欲の低下。
・勃起不全(erection dysfunction:ED):国際的に用いられる問診票として,International Index of Erectile Function(IIEF)がある。
・早朝勃起回数の減少。

★診断とポイント★
・HeinemannらによるAging Males’ Symptoms(AMS)スコアが頻用されるが,LOH症候群に特異的ではない。
・血液検査:テストステロン,遊離型テストステロンの測定を行う。
・国際的にはテストステロン値が診断に用いられており,血中のテストステロン値が300~350ng/mLを治療介入の目安としている。
・本邦における「LOH症候群診療の手引き」では,男性のテストステロン補充療法の適応として,遊離型テストステロン値が8.5pg/mL未満の場合としている。
・テストステロンは日内変動があるため,採血は午前中(7~11時)に行われる必要がある。
・スルピリドなどの抗うつ薬を内服している場合にはテストステロンが低値になる場合があり,服薬の確認は必須である。

ホルモン測定:原発性と続発性性腺機能低下症の鑑別に黄体化ホルモン(LH),卵胞刺激ホルモン(FSH)の測定が有用である。(原発性であればFSHが上がり、続発性では低い)

・LOH症候群に明確な診断基準はなく,AMSスコアや種々の臨床所見から推定される診断となる。
・Klinefelter症候群との鑑別が必要。
→最も頻度の高い性染色体異常で,染色体検査で47XXYを示す。第二次性徴以降に,男性ホルモンの欠乏を原因とする筋肉や骨密度の低下,男子不妊症をきたす。
・メタボリック症候群は肥満を含め,LOH症候群のリスクファクターであるので改善する
・ED:IIEF5スコアを施行し,必要があれば,シルデナフィルクエン酸塩(バイアグラ),バルデナフィル塩酸塩(レビトラ),タダラフィル(シアリス)などのホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬を投与する。
「LOH症候群診療の手引き」では,前立腺特異抗原(PSA)2ng/mL以上では,前立腺癌の可能性が否定できないため,一般的にテストステロン補充療法は行わないように推奨されており,テストステロン補充療法の前にPSA検査を行うことが望ましい。
・糖尿病などの併発疾患がある場合には,テストステロン補充療法の効果が乏しい場合がある。
・テストステロン補充療法の中止,再開のタイミングは,自覚症状の改善や健康感の回復を目安として,AMSスコアを定期的にフォローし決定する。
・日常生活を改善することで,症状を軽減できるケースが少なくないため,タバコを控え,バランスのよい食事やウォーキングなど適度な運動を行う。
・テストステロン,遊離型テストステロンは,同時に測定すると保険上,査定される(1回につき片方しか測定できない)。
・テストステロンエナント酸エステル(エナルモンデポー,テスチノンデポー等)のLOH症候群に対する保険適用はない。(類宦官症という病名を付けることで保険適応にしている)
・LOH症候群に対して,補中益気湯,桂枝茯苓丸,八味地黄丸,当帰芍薬散,加味逍遥散などの漢方薬の有効性が報告されているので試してみる価値がある
・現在ホルモン剤が入手困難になっているため、代替治療としてクロミッド内服も有効である(保険適応なし。自費)

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