・めまいの診断では,めまいの性状(回転性や浮動性など)より,発症様式や何によって引き起こされるか(誘発因子)などを重視する.
・急性めまいの頻度は末梢性めまい(内耳や内耳と脳をつなぐ神経路の病気によって発生するめまい.天井がグルグル回るような感じやふわふわした感じと表現されるめまい)が多いが,緊急度の高い中枢性めまい(脳出血や脳梗塞など)を見逃してはいけない.
A.めまいの原因
・めまいの出現様式は急性,反復性,慢性の3つ,誘発因子としては頭位変換や姿勢などがある.性状には回転性めまい,浮動性めまい,眼前暗黒感がある.
・良性発作性頭位めまい症(BPPV):末梢性めまい疾患のなかでは最も多い疾患である.特定の頭位や頭位変換に伴いめまいが生じる.持続時間の短い(多くは1分以内)めまいで,回転性のことが多いが,動揺性のこともある.耳石器から剥離した耳石が半規管内に迷入,あるいはクプラに付着することにより生じる.
・前庭神経炎:頭位変換と関係ない突発性の回転性めまいが数日続き,その後,浮動性めまいが持続する.多くはウイルス感染による前庭神経の炎症により生じるとされており,上気道感染後に発症することが多い.
・脳幹・小脳の出血・梗塞:小脳や前庭神経核由来の障害により,浮動性めまいや回転性めまいが生じる.めまい単独のことは少なく,失調や運動麻痺,感覚障害を伴うことが多い.→緊急性あり
・脳幹・小脳の一過性脳虚血発作(TIA:transient ischemic attack):椎骨脳底動脈領域の一過性血流障害により生じ,神経症状は発症24時間以内に消える.機序は脳梗塞と同様であるが,脳画像で梗塞病変はみられない.
・前庭片頭痛:めまいは回転性のこともあり,浮動性であることもある.持続時間は5分から72時間以内である.頭痛に関係する脳の領域と前庭経路との関連が示唆されている.
・起立性低血圧:起立後の脳血流低下により,浮動性めまいや眼前暗黒感を認める.
・心因性めまい:浮動性めまいを訴えることが多く,不安症やうつなどの精神疾患を患っていることが多い.
・持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD):何らかの急性めまいに続発し,浮動性めまいが3か月以上持続する.体動や視覚刺激によって誘発される.障害された前庭機能を補うために,視覚・体性感覚依存が持続しているために生じると考えられている.
B.めまいの診断
・めまいの性状によってでは,原因が末梢,あるいは中枢であるのかを断定できないため,出現様式や誘発因子を考慮して診断する必要がある.
・急性発症の反復性めまい:最も高頻度にみられるのはBPPVであり、再発しやすい. 前庭片頭痛はめまい出現時に必ずしも片頭痛発作を伴わないので,診断には片頭痛の病歴を確認する.めまいに加えて,聴力障害を伴う場合には,メニエール病などの耳鼻科疾患を考える.
・急性発症の単発性めまい:主なものには前庭神経炎と脳幹・小脳の血管障害がある.前庭神経炎は,突発性の回転性めまいが頭位変換とは関係なく発症する.脳幹・小脳の血管障害では,めまいが持続し,他の神経症状を伴うことが多いので,神経診察は重要である.脳出血や脳梗塞が原因になることもある.
・慢性経過の反復性めまい:起立性低血圧によるめまいは,自律神経障害を伴うパーキンソン病や糖尿病性ニューロパチーでみられる.起立後のめまいと血圧低下を確認する.心因性めまい,PPPDも可能性に入れる.
C. めまいの治療
めまいの治療は,めまいの原因疾患に対する治療が重要であり,急性期には対症療法を行う.
1.めまいの原因疾患の治療
原因が分かっているものについてはその治療を行う(BPPVの治療法として、患者の頭を適切に動かすことにより半規管内に迷入した耳石を前庭へと戻す耳石置換法などがある)
2.急性期めまいの対症療法
1)ジフェンヒドラミン・ジプロフィリン(トラベルミン)配合錠 1回1錠 1日3回 毎食後(2週間以内)
2)ジフェニドール(セファドール)錠(25mg) 1回1~2錠 1日3回 毎食後
3)ベタヒスチン(メリスロン)錠(6mg) 1回2錠 1日3回 毎食後
内服が困難な場合は以下のような静注薬を使用する
1)炭酸水素ナトリウム(メイロン)注(7%) 1回20~40mL 静注
2)ヒドロキシジン(アタラックス-P)注 1回25~50mg 静注
3)メトクロプラミド(プリンペラン)注 1回10mg 静注