「首への注射」と聞いて不安ではありませんか?
「首に注射をするなんて怖そう」
「本当に効果があるの?」
「神経を傷つけることはないの?」
星状神経節ブロックについて、このようなご質問をいただくことが少なくありません。
星状神経節ブロックは、ペインクリニックで長年行われてきた神経ブロック治療の一つです。帯状疱疹後神経痛や顔面神経麻痺などの治療に用いられるほか、一部の慢性疼痛に対しても有効性が期待されています。
近年では超音波(エコー)を用いて安全性を高めながら施行する施設が増えており、以前よりも安心して受けられる治療となっています。
この記事では、星状神経節ブロックについて、効果や適応、副作用、よくある質問まで詳しくご説明します。
星状神経節とは?
星状神経節とは、首の付け根(第6〜第7頸椎付近)にある交感神経節です。
交感神経は、
- 緊張したとき
- ストレスを受けたとき
- 痛みを感じたとき
などに活発になります。
本来は体を守るために必要な働きですが、長期間にわたり交感神経が過剰に働くと、
- 痛みが長引く
- 血流が悪くなる
- 手足が冷える
- 筋肉が硬くなる
- 神経の回復が遅れる
といった状態になることがあります。
星状神経節ブロックでは、この交感神経の働きを一時的に抑えることで、血流改善や疼痛緩和を目指します。
星状神経節ブロックの仕組み
局所麻酔薬を星状神経節周囲へ注射します。
すると、
- 交感神経が一時的にブロックされる
- 血管が拡張する
- 血流が改善する
- 神経周囲の炎症が落ち着く
- 痛みの悪循環が断ち切られる
ことが期待されます。
効果の持続時間は数時間ですが、繰り返し治療することで痛みが軽減し、その効果が長く続く患者さんもいます。
どのような病気に行われるのでしょうか?
① 帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛
もっとも代表的な適応の一つです。
帯状疱疹ではウイルスによって神経が障害されます。
強い痛みが続くと交感神経も過剰に働き、血流が悪化し、さらに神経障害が進む悪循環が起こります。
発症早期に星状神経節ブロックを行うことで、
- 痛みを和らげる
- 神経への血流を改善する
- 帯状疱疹後神経痛への移行を減らす可能性
が期待されています。
特に顔面や頸部に帯状疱疹がある場合には、有力な治療選択肢となります。
② 帯状疱疹後神経痛(PHN)
皮疹が治った後も数か月〜数年続く痛みです。
薬だけでは十分改善しない患者さんも多く、
- プレガバリン
- ミロガバリン
- デュロキセチン
- トラマドール
などと併用して神経ブロックを行うことがあります。
慢性化したPHNでは劇的な改善が得られないこともありますが、薬だけでは改善しない痛みが軽減することがあります。
③ 顔面神経麻痺
顔面神経麻痺では神経が腫れ、血流障害が起こると考えられています。
星状神経節ブロックによって血流改善を図る目的で施行されることがあります。
現在の標準治療はステロイド治療ですが、施設によっては補助療法として併用されることがあります。
④ 複合性局所疼痛症候群(CRPS)
外傷や手術後に強い痛みが続く病気です。
交感神経が痛みに関与している患者さんでは比較的高い効果が期待されます。
⑤ その他
以下のような疾患で実施されることがあります。
- 頚椎症による神経痛
- 外傷後疼痛
- 手術後疼痛
- レイノー症状
- 血流障害による疼痛
症状や原因によって効果は異なるため、すべての患者さんに適応となるわけではありません。
自律神経失調症にも効くのでしょうか?
インターネットでは「自律神経失調症に効く」という情報を目にすることがあります。
確かに星状神経節ブロックは交感神経に作用するため、自律神経の働きに影響を与える可能性があります。
しかし、自律神経失調症そのものに対する有効性を示す十分な科学的根拠は現在のところ確立されていません。
そのため、「自律神経失調症だから受ける治療」というよりも、神経痛や血流障害など適応となる病気があり、その一環として検討される治療と考えるのが適切です。
治療の流れ
診察後、ベッドに仰向けになります。
首を軽く伸ばした状態で、超音波を使いながら血管や神経を確認します。
細い針で局所麻酔薬を注入し、治療時間は5〜10分程度です。
治療後は20〜30分ほど院内で安静にし、問題がないことを確認して帰宅します。
治療後に現れる変化
治療が成功すると、
- 手が温かくなる
- 顔が温かくなる
- 肩や首が軽くなる
- 痛みが和らぐ
ことがあります。
また、
- まぶたが少し下がる
- 瞳孔が小さくなる
- 鼻づまりが改善する
- 声がかすれる
などの変化が起こることがあります。
これらは交感神経がブロックされたことによる一時的な変化で、多くは数時間以内に改善します。
副作用・リスク
比較的安全な治療ですが、副作用や合併症が起こる可能性があります。
比較的よくみられるもの
- 声のかすれ
- 飲み込みにくさ
- 注射部位の痛み
- 一時的なまぶたの下垂
まれな合併症
- 出血
- 感染
- 気胸
- 局所麻酔薬中毒
- 血管内注入
超音波ガイド下で施行することで、これらのリスクを減らすことが期待できます。
何回くらい受ければいいですか?
病気によって異なります。
急性の帯状疱疹では1〜数回で改善することもあります。
慢性疼痛では5〜10回程度行うこともあります。
効果を確認しながら、一人ひとりに合わせて治療回数をご提案します。
当院での星状神経節ブロック
当院では超音波ガイド下で安全性に配慮しながら星状神経節ブロックを行っています。
首には重要な血管や神経が多数存在するため、超音波を用いて位置を確認しながら施行することが、安全性向上につながると考えています。
また、神経ブロックだけに頼るのではなく、
- 内服治療
- リハビリテーション
- 生活指導
などを組み合わせ、一人ひとりに適した治療をご提案しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 首に注射をして危なくないですか?
超音波で血管や神経を確認しながら行うため、安全性は大きく向上しています。ただし、すべての医療行為と同様に、出血や感染などのリスクがゼロではありません。
Q. 注射は痛いですか?
細い針を使用するため、多くの方は採血や点滴と同程度の痛みと感じられます。
Q. 効果はすぐ出ますか?
治療直後から痛みが軽くなる方もいれば、数回の治療で徐々に改善する方もいます。疾患や症状によって個人差があります。
Q. 保険は使えますか?
帯状疱疹後神経痛や神経障害性疼痛など、医学的に適応がある場合には健康保険で治療を受けられることが一般的です。詳しくは診察時にご説明いたします。
Q. 治療当日に車を運転できますか?
一時的な視覚の変化や首の違和感、声のかすれなどが出ることがあるため、当日の自動車・バイクの運転は控えていただくことをおすすめします。
まとめ
星状神経節ブロックは、首にある交感神経を一時的にブロックすることで、痛みや血流障害の改善を目指す治療です。
特に帯状疱疹後神経痛や顔面神経麻痺、CRPSなどでは有効性が期待されており、超音波ガイド下で行うことで安全性も向上しています。
一方で、すべての病気に万能な治療ではなく、適応を見極めることが重要です。
「薬だけでは痛みが改善しない」「帯状疱疹後の痛みが長引いている」「神経ブロックについて詳しく知りたい」という方は、お気軽に当院までご相談ください。