HRT(ホルモン補充療法)とは
HRT(Hormone Replacement Therapy:ホルモン補充療法)は、閉経により減少した女性ホルモン(エストロゲン)を補う治療法です。
女性は閉経前後になるとエストロゲンの分泌が急激に低下します。
このホルモンの変化により、次のような症状が現れます。
更年期症状の例
- ほてり(ホットフラッシュ)
- 発汗
- 動悸
- 不眠
- めまい
- 頭痛
- 倦怠感
- 気分の落ち込み
- イライラ
- 関節痛
このような症状をまとめて 更年期障害 と呼びます。
HRTは、減少したエストロゲンを補うことで更年期症状を改善する治療であり、現在では更年期障害の第一選択治療とされています。
HRTの効果
1 ホットフラッシュ(ほてり・発汗)の改善
更年期で最も多い症状が
- のぼせ
- 発汗
- 顔のほてり
などの 血管運動神経症状です。
HRTはこれらの症状に非常に高い効果があり、禁忌がなければ第一選択とされています。
2 不眠・気分の落ち込みの改善
エストロゲンは脳内神経伝達物質にも関与しており、
- 抑うつ
- 不安
- 睡眠障害
などの改善が期待できます。
3 骨粗しょう症の予防
閉経後は骨密度が急激に低下します。
HRTには
- 骨密度を増やす
- 骨折リスクを減らす
効果があることが多くの研究で示されています。
4 膣の乾燥・性交痛の改善
エストロゲンが減少すると
- 膣粘膜の萎縮
- 乾燥
- 性交痛
などが起こります。
HRTによりこれらの症状が改善することがあります。
HRTの種類
HRTにはいくつかの治療方法があります。
① エストロゲン単独療法
子宮を摘出している女性に使用します。
② エストロゲン+黄体ホルモン併用療法
子宮がある女性では、エストロゲン単独投与により
子宮体がんリスクが上昇する可能性
があるため、黄体ホルモンを併用します。
HRTの投与方法
主な投与方法は以下です。
内服薬
飲み薬タイプ
例
- プレマリン
- ジュリナ
貼付薬(パッチ)
皮膚に貼るタイプ
例
- エストラーナテープ
特徴
- 血栓症リスクが比較的低い
ジェル
皮膚に塗るタイプ
例
- ディビゲル
膣製剤
膣の乾燥や萎縮性膣炎に使用
HRTの副作用
HRTでは以下の副作用が起こることがあります。
- 不正出血
- 乳房の張り
- 吐き気
- 下腹部の違和感
- むくみ
多くの場合、1〜2か月で軽快することが多いとされています。
HRTのリスク
HRTにはいくつか注意すべきリスクがあります。
乳がん
エストロゲン+黄体ホルモン併用療法では
乳がんリスクがわずかに増加すると報告されています。
ただし絶対リスクは小さく、生活習慣によるリスクと同程度ともされています。
血栓症
特に
- 高齢
- 喫煙
- 肥満
などがある場合は注意が必要です。
子宮体がん
エストロゲン単独投与の場合にリスクが増える可能性があります。
HRTを受けられない場合
以下の方はHRTができない場合があります。
- 乳がん既往
- 子宮体がん既往
- 血栓症既往
- 重度肝疾患
- 原因不明の不正出血
診察時に既往歴を確認し、安全性を判断します。
HRTはいつ始めるのがよい?
HRTは
閉経後できるだけ早期
に開始することが推奨されています。
閉経後10年以上経過している場合や
60歳以上で新規開始する場合は
- 血栓症
- 心血管イベント
に注意が必要です。
HRTはいつまで続けられる?
HRTの継続期間は
- 症状
- 年齢
- リスク
を考慮して個別に判断します。
一般的には
5年前後を目安
とすることが多いですが、必ずしも期限はありません。
HRT以外の更年期治療
HRTが難しい場合は以下の治療があります。
漢方薬
- 加味逍遙散
- 桂枝茯苓丸
向精神薬
- SSRI
- SNRI
睡眠薬
自律神経改善薬
患者さんの症状に応じて治療を組み合わせます。
当院の更年期治療
当院では
- ホルモン補充療法(HRT)
- 漢方治療
- 睡眠障害治療
- 自律神経症状の治療
などを組み合わせ、患者さま一人ひとりの症状に合わせた治療を行っています。
更年期症状でお困りの方はお気軽にご相談ください。
ホルモン補充療法(HRT)のよくある質問(FAQ)
Q1 HRTとは何ですか?
ホルモン補充療法(HRT)は、更年期で減少した女性ホルモンを補う治療です。
Q2 HRTはどんな症状に効果がありますか?
ほてり、発汗、不眠、イライラ、膣の乾燥などの更年期症状に効果があります。
Q3 HRTは太りますか?
体重増加は一般的な副作用ではありません。
Q4 HRTはいつから始めるのがよいですか?
閉経後10年以内、または60歳未満での開始が推奨されています。
Q5 HRTはどのくらい続けますか?
症状や体調に応じて数年程度継続することが多いです。
Q6 HRTは保険適用ですか?
更年期障害の治療として行う場合は保険適用になることがあります。
Q7 HRTで乳がんのリスクは上がりますか?
長期使用でわずかにリスクが上昇する可能性があるため、定期検査が推奨されています。
Q8 HRTは誰でも受けられますか?
乳がんや血栓症の既往がある場合などは受けられないことがあります。
Q9 HRTはどこで受けられますか?
婦人科や更年期外来で受けることができます。
Q10 HRTと漢方治療は併用できますか?
可能です。症状によって併用することがあります。
この記事の監修医師
あんどうファミリークリニック 院長 安藤 岳史
医師。地域医療・在宅医療を中心に診療を行い、日常診療に基づいた医学的知見をもとに医療情報を発信しています。 本記事は最新の医学的知見および臨床経験に基づき作成・監修されています。
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を代替するものではありません。症状がある場合は医療機関へご相談ください。